サイノカミ 2017-03-23 21:54:40 |
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>日向
――それは、容易く口にしてはいけないことだ。我がお前を帰したくないとねだればどうする?
(躊躇いなく告げられる好意と許容は危ういほどに無防備で、甘い蜜にも似たその言葉へ吸い寄せられるが如く手を伸ばすが一陣の風にふと動きを止めてはぴんと伸びた腕を捕まえ優しく下ろし。己には未だ理解しえない事だがカンナギを永久に常世へ置いておくというのは酷い仕打ちなのだと神々は言う。それを心の隅に留めていたからこそ、赤い唇へ指で蓋をするように触れながらゆっくりと問い掛け。恥じらったり笑みが弾けたり、くるくる変わるかんばせはさながら万華鏡。眺めていればそれだけで満ち満ちた心地になりふとすれば言葉を返す事さえ忘れて見入るもの、かなりの間を空けて「あぁ、今日よりずっと我の家に――」ようやく答えようとすれば相手はもう次の言葉をきらきら華やぐ声にて紡いでおり、結局は口をつぐんでそれを見守るに至ると引き込まれた店の中でも輝くかんざしへ促されるまま目をやり「――日向のようだ」極彩を覗かせるぬば玉の黒色をじっと見つめ、次いで傍らの相手を見やって嬉々とした声を零し。けれども手に掬い取ったのはその隣に並ぶ小さな花を象った髪飾り。薄く伸ばした白い宝石に黄や橙、薄紅の花模様が降るそれを相手の髪へ重ねてみれば「我は飾ったとてしようがない。お前のほしいものを選びなさい。それが我のほしいものになる」謎かけのように語りかけながら、黒髪に映える淡い極彩にふっと笑みを零して"ああ、めんこい"と見惚れ)
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