サイノカミ 2017-03-23 21:54:40 |
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>雪代
――……良い心掛けだ。どの神の元でもその心を忘れるな。
(髪へ触れる手は日頃川へ差し込まれる手と同じ温もりをしているが、指の腹の柔さばかりは現世よりも遥かに生々しく感ぜられればざわりと鱗の逆立つような心地に息を呑み。すぐさま邪心を払う咳払いをして歳の割にできた志を示す相手を素知らぬ顔で褒めてやれば「ゆきしろ。雪代か。それとて良い名ではないか。此処でもそう名乗っていると良い……真の名は、お前の父母の為に大切に取っておけ」聞いた名をただ繰り返すだけの硬い声音ながら哀しいさだめに俯く子の横顔を見下ろし、その名とて悪くはないと伝えては欲深の神々に父母のみ知る大切な名を奪われぬよう静かに釘を刺して。橋を超えた先にはたゆたう青と橙の篝火の元日が暮れてからもう一商売と声を張り太鼓を鳴らし客を呼ぶモノノケ達の商店が連なり、祭りのような賑やかしさを咲かせるが己が通りへ踏み入れば皆慌てて道の端にはけ頭を垂れるなり膝をつくなり己と連れたるカンナギへ敬意を払い。そうして開けた道を真っすぐ行きながらこちらを見上げる顔を横目で見据えては「私達常世の神々の住まう屋敷へお前を連れて行く。その屋敷は今日これよりお前の家となる。私ばかり見上げている暇があるのなら、この道を確と目に留めておけ」相手が抱いているやも知れぬ不安を断ち切るために一言一句はきはきと告げ、長い常世暮らしの中街へ遊びに出ることもあるであろう相手に厳しくも促して)
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