サイノカミ 2017-03-23 21:54:40 |
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>月子
(溢れ続ける不安の言葉を押し止めたのは情けない、しかし元気の良い泣き声。産声のような子供の声に息さえふっと止まり、それから胸に満ちた絶望を安堵の溜め息として深く深く吐き出せば振り払う気力もなくしがみつかれるがまま縮こまる相手の体を支えて。首筋にぽろりぽろりと伝う温い涙も生きている証と思えば不快ではなく、むしろ血の気の引いた身体を温めるそれは心地好くさえあって“本当に、良かった“そう吐息のように一言だけ零せば相手の視線を誘うようにそっと背中を叩き「怖かったろう、……此処にはお前を脅かすものが多すぎる。怖い目に合いたくないのなら、二度と勝手な真似をするんじゃない――もう二度だ。いいな」くたびれた声では説教にもならず、溜め息のように呟いて泣きじゃくる子を抱えたまま再び川辺まで引き返し。そうすると川の名の通りまさしく彼岸から舞い戻ったような心地になり、一呼吸つく頃には乱れた心も少しは落ち着きを取り戻して「……濡れたままでは風邪を引く。着替えを取りに行くぞ、星はまた後だ」冷静さを取り戻せば気になるのは水を吸った相手の着物。いくら春の近い季節とはいえこのまま野ざらしにしておけばそれこそ病にかかる、そう考えては暗い声は相変わらずだがなるべく子供の機嫌を直すように、あやすような一言さえつけて促し「歩けるか」いまだしがみついたままの相手に引っ付かれたままでは少々厄介だと、しかし死にかけたばかりで歩けというのも酷な話だろうかと僅かな困惑を滲ませて)
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