サイノカミ 2017-03-23 21:54:40 |
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>疫病神
――ッげほ!っ、げほ……は、ぁ……ッ!
(屋敷から出ることなど稀だった子供が泳ぎなど習っているはずもなくそもそも体を冷たい水が包む感覚すら初めての経験、動揺と息苦しさにもがこうとも整えられた身なりは水中での自由を奪う枷となり。呼吸が出来ない苦しさが急激に恐怖へと変わっていく中水面に映る月がゆらりと大きく揺れたかと思えば此方に伸ばされる助けの手に引き上げられ、勢いよく水面に体が浮上すると同時に肺に急激に空気が戻り。聊か水を飲んではしまったものの程なくして引き上げられたことにより大事はなくげほげほと噎せる様にして体内の水を吐き出すと濡れた着物のせいだけではないだろう体の倦怠感にぐたりと手足は脱力してしまい。目に入った水によりぼやける視界に映るのは共に星を眺めに来た相手だろう、酷く必死なその声に先の出来事がそれ程のことであったと自覚すると共に、助け上げられ生を感じたからこその恐怖心が一気に胸に押し迫ってくると堪えることも出来ず瞳からは大粒の涙が次々と零れ落ちていき「ッう、え……~っ!」ひくりとしゃくり上げた途端とうとう緊張が切れた様に幼い泣き声を漏らし始めると自分を救い上げてくれた温もりに縋るようにぎゅう、と首にしがみついて)
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