サイノカミ 2017-03-23 21:54:40 |
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>月子
……そうか。お前も、疫病神か。
(唐突な暴露に呆けたような沈黙を見せた相手だが、怯むどころか小さな足音を立てて駆け寄って来るその判断に今度はこちらが面喰らい。不用意に寄るなとはねのける事も忘れてゆらゆら漂う花と異国の匂いにくすぐられ、呆然としていた己を呼び戻したのは"一緒"というその一言。厄介者の疫病神、そんな呼称が人間に用いられる時は大抵ロクな意味合いを持たず。人に言われたか自ずと口にしたのかは知らないが年端も行かぬ少女にあまりにも不似合いな名に目隠しの下の眉をひそめては先ほどと一転、静かに相手の言葉をなぞり「……人が、お前のような子供が神を名乗るなど思い上がりにも程がある。お前はただの人の子だ、……此処にいればすぐわかる」歪に吊り上げて引き攣ったような笑みを作る唇から零す言葉は皮肉ではなく、暗に子を呼ぶにはあまりに悲しい呼び名を拒むもの。そして相手をこの常世へ置いておくと決めた静かな決意を含むもの。疫病神扱いの現世より人扱いされる此処のほうがずっと良いと、痩せた胸の内で様々な思いを巡らせつつ「行くぞ」と傍らの相手にはたった一言だけ添えてまた歩き出し。暫く行けば深紅の野原は剥き出しの河原へと姿を変え、積み上がる小石と湖の如く広がる水面だけが目に映る賽の河原にたどり着く。ちょうど瑠璃色の空にスゥと一筋引っ掻き傷のような光が浮かんだのを気配だけで確かめては「――さぁ、これが御所望の星だ。側へ降ってきても拾うなよ」初めはサラサラと雨筋のように、次第に天狗星と呼ばれる空の半ばで花火のように爆ぜたり散ったりする流星が降り注ぐ景色を目隠し越しに己も仰ぎ。水面もまた夜空の光を映し星の海と化す河原は禍々しくも美しいのだろうが、そんな事より己には隣のお転婆が落ちてきた星にぶつかりやしないかと気が気でなく)
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