自堕落な男。 2017-03-17 00:05:23 |
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>>68 紫
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(帰るため靴を履こうとした途端バランスを崩し座り込んだ相手を見て、思わず一歩踏み出し手を貸そうとしかけたが、つい今しがたの出来事が脳裏をよぎって躊躇いが生じ、「……っ」悩ましげに顔を顰め、伸ばしかけた手を引っ込めて。
そのまま緊張した面持ちで眺めていると、すぐには起き上がらず何事かを考え込む相手。しかしやおら立ち上がり、化粧が落ちて高校時代のあどけなさが戻ったように見える顔で、己が好きだと相手は告げた。その瞬間、抑えていた感情が暴発し、「待てよ、言い逃げは卑怯だろ」──踵を返して屋敷を去ろうとした彼女の片手の手首を掴み。
彼女は事態を恐れていて、先に進むことを望んでいない。それでも良い、引き止めはしない、しかしただ一言、我が儘とわかっていても伝えたかった言葉をかけて。)
──俺も、紫のことが好きだ。十年前から好きだった。だからって、別にどうにもならなくていい。ただ……俺もおまえが好きだってことは、忘れてくれるな。……頼む。
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