自堕落な男。 2017-03-17 00:05:23 |
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>>60
……え、おい、それって……
(己の腕の中で、気丈な彼女が肩を震わせながら吐き出したその言葉。それを理解出来ないほどの朴念仁ではなく、しかしその意味がもたらした愕然とする衝撃から、目を見開き、彼女を見下ろしながら問う言葉も半ばにして消え。
──まさか、まさか、自分と彼女は、気の遠くなるような遠回りをしてきたのか。ずっと示してくれていた想いを、「そんなはずが無い」という思い込みから屈折したからかい方で自分は突き放してきたのではないか。恐れと後悔がどっと襲いかかってくるが、しかし己の服を彼女が掴む感触が、自身を現実に引き戻させる。そして涙声のまま、彼女が自分に言うことなど決してないだろうと思っていた言葉を伝えてきた時、ああ、と疑念が確信に変わると同時に、自身の中で決意が生まれる。
──辛い思いをさせてきた彼女に、追い打ちをかけるようにして本音を引き出させたのだ。やるべき事は明らかだ。「誰に甘えたら良いの?」その問いには直接答えず、不意に背中や頭を撫でていた腕を解いて彼女の肩に軽く置くと、軽く身を屈めて頭を寄せ、低い声でそっと促し。)
紫。……顔、上げろ。
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