自堕落な男。 2017-03-17 00:05:23 |
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>>35 詩織
ああ、その辺は俺が明日にでも買ってくるよ。でうせ切らしていたしな。まだお前と飲めないのが残念だがね。
(無邪気な歓声のあどけなさに少し笑いながら、酒類の買い出しは任せた、と言い。食卓に並ぶ料理の話をし、材料の相談をする、まるで本当に家族のようなやりとりに心が穏やかになったのか、ちらと見上げてきた少女の瞳を落ち着いて見返すと、いつか彼女が大人になるまでまだこの関係は続くだろうか、そんなことを思いながら、いつものように軽口を叩き。
しかし、「急がなくていい」というこちらの台詞を優しく断り、少し眠たげな、いつもよりずっと素直な声で可愛らしい言葉を贈られると、思考は止まり、動きは我知らず呼吸すら忘れ、ただ枕に小さな頭を委ねる少女を物言わぬまま見下ろして。──不意に湧き上がってきたそれは、愛しさ。胸の内が濡れるような不思議なその感覚を覚えた瞬間、ああ、と内心男は呟く。蝋燭の灯に照らされている小さなこの少女のことが、己はずっと愛しかったのだ。おそらく、最初に屋敷に転がり込んできた時から、ずっと。
「……そういう、ことか」と顔を片手で覆いながら微かに笑って呟くと、その掌を少女の方に不意に伸ばし、さらさらした髪を撫でながら礼を述べ。次いで自身も気付かぬうちに、今までしたことない誘いをごく自然と切り出しており。)
……ありがとうな、詩織。そう言ってくれて嬉しいよ。
春に、そこの河原の桜が咲いたら……花見に行こうか。おまえの進級祝いも兼ねて、さ。
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