自堕落な男。 2017-03-17 00:05:23 |
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……っ。
(襖の奥の慌てた声とぱたぱたとこちらに寄る足音が、何故か酷く心の琴線に触れる。
己は一体、何をしている……? 未成年の少女を家に泊めること自体常識で言えば危ういのに、幾ら自堕落で放埓な己とはいえ、こんな夜這いにも似た真似など。だが、「気になる料理があったら」と少女が料理本を残していったあの時から、どうにも胸に寂しさが残り、少女が何故か酷く恋しい。ただたまらなくそばにいたい、そんな思いに駆られていて。
そのいつにない余裕の無さも、しかし少女が襖を開けてこちらを見た時には冷静に押し隠しており。料理本を軽く掲げ、煙草をくわえた口に小さく笑みを浮かべながら、何てことのないように持ちかけ──だが内心は、やはり警戒されるだろうか、と柄にもなく懸念しており。)
いやね、お前に作って欲しい料理の話をしたくてさ。すぐそこに蝋燭あるから、少しだけ明かりを灯して……話してたいんだよ。いいかい?
そっか……それは良かった、凄く。
おう、そうだな。一応フルネームで、葛西恭哉、としておこうか。好みじゃなかったらまた変えるから、遠慮なく言ってくれ。
詩織だな、了解。そちらさんが必要に感じたら、そのとき伝えてくれたら大丈夫だよ。ありがとう。
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