森の人 2017-03-04 13:16:37 |
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──普通は有り得ないわよ。狼は吼える事はあっても、人語を話すなんて聞いたことが無い。妖怪とか…そんな類だと神父様に聞いた事があるけれど。
( 感情の起伏に鋭いとは言え、わかり易い程に苛立った様子の狼にそう言い放ち、平然と相手の瞳をを見据え。自身に何処か似たその警戒心に妙な親近感が湧いて来る。さて、どう手当をするのが正解か…。銃で撃たれる様な、凄惨な出来事には未だ遭遇していない自身にとって本で得た知識だけが頼り。じわりと血の滲む真白な布を見詰めては、ふいに聞こえた相手の言葉にキッと目尻を釣り上げ。「 あ…あんな奴等と一緒にしないで…っ! 」私だって好きでこの容姿に産まれた訳じゃない、と続く筈だって言葉が喉に痞える。憎々しげに呟かれた其れは、思った以上の冷たさを纏い真っ直ぐ相手にぶつかる。ただ、その声量に自身も驚いたのかすぐ様ハッとした様な表情浮かべ口篭り。その上自身が声を荒らげた瞬間、流れる様な動作で弾丸を取り出す姿に暫し呆然としては丸々と瞳を見開いて。「 随分手慣れているけれど…、貴方は何時もこうして狙われているの…? 」初めは純粋な好奇心。固く閉ざした口を小さく開き問われた其れは、閑静な森の中に小さく響く。銃弾を取り出した事による出血も少しばかり治まってきたのは相手の生命力の賜物か。「 あ、ねぇ…。薬草って狼にも効くのかしら…。 」ふ、と気になったことが一つ。自然界に生きる狼は薬草を使う事等無いだろうと思えば、少々不安げにぽつり。多少臭いがよく効く薬を神父様から貰ったことがある。但し本当に臭い。コロコロと質問が幾つも湧いてくる辺り、恐怖心はもう無いのか幾分か表情も豊かで。 )
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