赤の騎士 2017-03-01 00:05:01 |
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あの方と連れ添っていくには少しくらい妬かせた方が丁度いいのよ。博愛の罪深さは、身を以て味わった者だけが知るのだから。
(互いに親しいかの騎士のことだからだろうか、普段真面目な彼から出た意外な揶揄いの色を含んだ言葉にふと薄く笑みを浮かべると悪戯っぽく紅を引いた唇に人差し指を当てながら囁くような言葉を漏らし。騎士の博愛は彼の誇るべき美点であり、そんな彼だからこそ城の召使やトランプ兵にも慕われていることは同じ城で過ごしていれば分かること。けれど彼を女性として愛しく想う身からすれば時折その美点が嫉妬を燻らせてしまう火種になるのもまあ事実で、意表返しほど意地悪な意味合いは込めていないにしろ時には他の住民と二人で出かけ博愛が生む暗い面を彼にも理解させられたら、そんな密かな企みを明かして。「……でもそうね。あまり虐めるのも可哀想だし、慰め位はしてあげようかしら」博愛を時に疎ましく思えどもその嫉妬の寂しさを知っているからこそあまり彼を悲しませたくないのもまた本心で、困ったように肩を竦めながら相手の提案に頷くと帰りに土産を見繕うことを頭の片隅に置いてから案内される席へと進み行き。「ふふ、あれだけ愛おしそうに語る貴方を見て他を選ぶほど無関心じゃなくてよ。キャロットケーキと……そうね、レモンティーを頂こうかしら」メニューを受けとりながらも目で追ってしまうのはやはり相手が此処に赴くに至る理由となったキャロットケーキの文字で、さらりと全体に目を通してからさして迷う様子もなく注文を口にするとメニューをウェイトレスに手渡して)
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