三原色 2017-02-22 18:19:38 |
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( ぱちり、と目を開けば目の前に広がるのは特に変化の見られない真っ白な天井のみ。はて、自分は一体こんな場所で何をしていたのか、と記憶を遡ろうと試みてはみたものの、目を開く前までの行動、それら全てが思い出せず。それだけなら未だしも自身の名前や出身さえも忘れているその事実に思わず大きな溜め息が漏れ。これが俗にいう記憶喪失というやつか、となんとも心細い心地になって。ひとまずこんなところで寝転がっていても何も変わらないのは明白故に渋々と重たい体を強引に起こし。きょろりと目だけを動かしつつ、周囲の様子を見れば呆れるほどの白に埋もれ。家具もない上に色もないその空間には自分がどういう人物なのかを表すものも当然なく、くそ、と悪態をつきたくなる気持ちを強引に落ち着かせ。ぺたぺたと部屋の内部を足音をたてつつ散策しておれば不意に開く扉。そちらに視線を向ければそこにたっていたのは見知らぬ女性。何かをいうよりも先に彼女は薄く微笑みを浮かべると慣れたような態度で「どこまで覚えていますか」等と問うてきて。 )
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