傷ましの愛に灯を　　

お返しだなんて！昨晩たしかに私は君の時間を買い取ったというのに、その言い方じゃまるで君に貸しを作ったみたいじゃないか。面白いことを言うね。
（ いきなり"ここは天国か"などと突飛な考えに行きつく程に、彼女にとって穏やかに迎える普通の朝というものは恐らくそれ自体が信じ難いものなのだろう。更にベッドから降りて来て先ずその口から発せられたのは"返礼として自分は何をすべきか"という旨の質問。その甲斐甲斐しい姿勢が、これまで彼女が男たちから受けてきた売春婦としての扱いを思わせ切なく胸を締め付ける。そんな彼女を哀れむ気持ちは決して表情に出さぬよう、にこやかに笑顔を取り繕い陽気な口振りで返して。しかし実際に客である立場のこちらが昨晩相手から何も得ていないことは事実。こんな理屈では彼女を納得させるには些か不足だろう、何か良い案は＿＿と一瞬考えを巡らして。）
そうだな…もし君の気が済まないというなら、朝食を拵えてくれないか。朝から何も食べていないんだ。
（ 業とらしく自身の腹のあたりを擦りながら片目を瞑ってみせ。）