Writer 2017-02-03 23:59:58 |
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(良い香りのする寝具の中で穏やかな眠りから目を覚まし上品な柄のカーテンの隙間から差し込む陽光にまばたきをして。自分が何処に居るのか、どうしてここにいるのか一瞬分からなくなり急いで上半身を起こして両腕を天井に向けて体全体で伸びをすると室内をぐるりと見回す。段々と頭がはっきりしてくると昨夜の事を順を追って思い出そうと頭を捻り。昨夜は冷たい雨が降っていた。いつものように夜の街でお花を売っていて、コウモリ傘の下から男の人の大きな手が差し出されわたしは差し出された温かな手にそっと自分の冷たい手を重ねて__。
その時扉が開いて昨夜の紳士と目が合い。その微笑みは春を貪る男たちの歪な微笑みとは全く違う。男たちが道端の少女の手を引く動機はいつも同じなのに、名前も知らないこの紳士と過ごす夜は彼らと過ごす夜とは似ても似つかぬ夜だった。しかもにこやかに朝の挨拶まで。今朝の気分はどうかなんて彼らは普通聞きもしない。訳が分からずにきょとんとした表情で自分が考え得る中で最もあり得そうな事を言葉にして。)お、おはようございます。わたし、凍えて死んだのかしら…。天国にいるみたい。
( ベッドから降りて彼の側に寄ると不思議そうな目でじっと見つめ。)
__でも多分違うみたいですね。貴方の望みはなんですか? わたしは何をお返ししたらいいんでしょうか。
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