主 2017-01-27 17:17:30 |
通報 |
>国立
…あなたを救えなくてごめんなさい
(子どもを抱き退避した国立が息を潜めてからほんの数秒後。夜風に載って薫ったのは僅かな花の香。薔薇や金木犀のように強い香りでは無く、ジャスミンやスミレの様にほんのりと香るそれは接近者の存在を訴えるには十分で。
コツコツとコンクリートを鳴らす背の低いヒールの音。やがて暗闇の中次第に慣れてきた目が捉えたのは月明かりに照らされ仄かに白く光るアズマギクの花束。花言葉は『しばしの別れ』…クリスチャンなのだろうか、死者への哀悼が読み取れた。そして、その花束を抱いているのはプラチナブロンドの髪を風に揺らす少女で、花束と同様に月明かりを受けて煌めく髪はまるで銀糸のよう。
少女は先程まで国立と子どもが居た女性の元へと歩み寄るとゆっくりとした動作でその隣に膝をつく。亡骸の顔に掛けられた布を少しだけ捲りその顔を数秒間見つめた後に綺麗に正座をして見せると、十字架こそ手にしてはいないものの素早く十字を切ってみせる。
それから女性の胸部に持参した花束を丁寧に置き、自分より大きな女性の腕を持ち上げて組ませればまるで女性が花束を抱いているかのよう。
最後に顔布を元に戻して亡骸に向かって両の手を合わせればその伏せられた瞳から一粒の涙が地面を穿ち、その桃色の唇から謝罪の言葉が漏れる。――…見知らぬ死者に向かって泣ける者が居るのか。誰もが思うだろう動作に時が止まったかのようで。
しかし、改めて少女の姿を見直せば、それは国立に行動を起こさせるだけの要素が大いに含まれていて。
雲間から覗いた月が照らした彼女の姿は藤色のプリーツスカート以外が夜闇に溶け込むような黒い衣服で統一されていて、それは国立がよく知る組織のものでありーー…)
(/規定数を満たせているか不安ですが宜しくお願いします)
トピック検索 |