霜月タルト 2017-01-03 19:12:07 |
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突然現れた自分の知る現実的なものとは異なる裂け目に抵抗どころか、驚く暇もなく二人はそこへ容易く吸い込まれてしまった。思考はプツリと糸が切れるように消え、無意識に目を閉じる。
どれほど時間が経ったのか。ゆっくりと目を開き微かに声を漏らす。ぼんやりとした視界は徐々に明確になっていき、そして今の光景に驚いた。どこかの物語に出てくるかのような、或いは世界遺産にでもあるようなそんな造りの建物内にいる。見た限りでは遺跡、と表現する方がいいだろう。
先程まで病院にいたのにここはどこなのか。薬品の匂いが控えめに漂う白い病室と違い、土埃の匂いがする。
「……あ、青葉君。……青葉君は!?」
ここでもう1人いた筈の存在に気が付く。ハッとした声を上げ、すぐさま立ち上がり青葉を捜そうとした。
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