月 2016-09-03 18:33:52 |
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初めて履いた草履の感触に、銀色が抵抗を覚えたのは数分だった。
馴染んでしまえば何て事はなく、むしろこちらの方が過ごしやすさすらも覚える。
「この小さな池には鯉もいるんだよ。あ、でも、食用じゃないから食べちゃ駄目だよ?」
「いや、いくら俺でもそのくらいの分別はあるから」
織のからかうような言葉に苦笑を浮かべ、銀色は池の内側に視線を向けた。
織が小さいという池のサイズは襖半分程で、その中には錦鯉が二匹悠然と泳いでいる。
鮮やかな鯉達はどこか屋敷の主達を思わせ、銀色の心に切なく響く。
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