月 2016-09-03 18:33:52 |
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しかしそれでも、ページをめくる凪の指先は震える。
めくる先に増える桜夜の狂気とも言える愛情が、凪に恐怖に似た感情を与えるのだろう。
数ページめくると凪の指先が止まった。
凪の心がもう見たくない、こんな事は受け入れたくないと心が悲鳴を上げたからだ。
「凪、どうしたの?疲れたのかな?でもさ、これで俺が凪をどれだけ大切に思っているか分かったよね?」
言葉を発する事の出来ない凪に、桜夜はどんな答えを望んでいるのだろう。
しかし今の凪に出来るのは、桜夜の望む答えを告げるしかないのだ。
どうあがいても、この場から逃げ出す事も、ましてや桜夜が望むなら声すら発する事も叶わない。
凪の内側が壊れていく音がする。
その音は小さすぎて、凪自身まだ気づいてはいなかったが、その音が凪の心を壊すきっかけになったのは確かだった。
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