月 2016-09-03 18:33:52 |
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「すいません、誰かいらっしゃいますか?」
扉を開けて中を覗くと部屋の明かりはついているが、肝心の人がいない。
困り果てていた黒猫の妖人の背後から、不意に声が囁かれた。
「ようこそ、願いが叶う屋敷へ。俺がこの屋敷の主で、銀色。別名銀の主という者だよ」
背後に振り向くと、そこには美しい銀の狐が立っている。
月に照らされた銀の主は、その艶やかな尾を揺らし軽い自己紹介をして見せた。
数秒惚けていた黒猫の妖人だったが、すぐに我に返り自身も名を名乗る。
「僕の名前は黒衣織、叶えてほしい願いがあってきたんだ」
簡潔に分かりやすく話す織を見て、銀の主は室内の応接用の客間へと案内をする。
目的の部屋は玄関から近く、室内には大きなテーブルと座椅子が二つあるだけのようだ。
「さて、それじゃあ早速だけど、織君の願いとやらを聞かせてもらえるかな」
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