キメラ、 2016-08-30 17:56:41 |
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◎:巻島裕介 ※死ネタ/鬱/捏造/観覧注意
────さか、み…。
(一体何を思ったのだろうか。否、ぼんやりと回転を緩めていた思考を働かせれば嫌でも容易く動機まで導かれてしまう。ただ自分の為だけに彼は緋色の背景に背を向けたまま、まるでふかふかのベッドに背後から倒れ込むようにしてバルコニーの手すりから落下して行く。ゆっくりゆっくり、スローモーションのように視界に広がる黒いドレスの裾があんまり優雅に泳ぐので、相手の名前を呼ぼうとする己の声が皮肉にも弱々しく掠れ、喉奥に釘が詰まったかの如く重たい痛みに顔を歪めてしまえば最後、情けなく途中で音が途切れて。ヒュ、呼吸をしているのかしていないのかすら定かでないそれを吸うと既に伸ばしていた腕を更に前方へ遣り、柔らかそうな黒い布を掴もうとするが無情にもそれは叶わず、やけにクリアな視界には自身の拳のみが残っており、如何にも力の入らない指先からじわじわと絶望が身体中に広がって。目の前には憎たらしい程誇らしげな夕日と山々が連なっているも、今ではそれらも何の意味も持たない。何の意味も持たない景色を瞳に映すことは出来るのにも関わらず、ただ下を向くことだけは出来ない自分に呆れ果てては精一杯明日へ伸ばしていた手の平を我ながら手触りの良い髪の毛にくしゃりと置くと、まだ温もりが残る太めの手すりにぐったりと身を任せ。)
…しょうもねェッショ、こんなの。
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