博多っ子 2016-08-11 18:08:59 |
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… いえいえ、今日もお疲れ様たい。
( バイトが終わり、着替えて防寒具やらを身に付け少しは体温が上昇した身体で外へと出て。冬の寒さ、と言うことで風も冷たく例え着込んでいるとはいえ頰を掠める冷たい風に思わず小さく身震いしそうで。然し、己には彼にチョコを渡す、という最大のイベントがあり。外の寒さなんて気にしてはいられない。ちらちら、と彼の様子を伺いつつチョコが入っているバックをぎゅと握りしめ。「 … っ、え。」緊張で頭が真っ白な己でだったので彼が続けて述べた言葉があまりよく耳に入ってこなかった。送ってくれる、なんて単語が聞こえた気がするのだが被害妄想だろうか___胸を高鳴らせていればすぐその高まりは少し違う意味で己の胸を高鳴らせ。己の視界に入ってきたのは、とても綺麗な女性。己なんかと比べては失礼なくらい大人っぽくて。彼と彼女が醸し出している雰囲気が只の友達だとか知り合いと違うのなんて己にだってわかる。胸が苦しい、誰かに心臓を潰されているようで。二人のやり取りが見たくは無いのに釘付けになって一言一言が耳に入って来る。「っ、はい。こちらこそ、時人さんはお兄ちゃんのようで ―――いつもお世話になっとるんです。」純粋に真っ直ぐに彼の事を伝える彼女に胸がズキズキと痛んでその痛みを抑えるかのようにバックを持っている力を強め。己は嘘を吐いた。己が彼を兄のようだと思ったことなんて一度も無い。己の恋心に蓋をするように自然と口から出た言葉。「 …全然良かとよ。う、ち丁度こん後用事あるんで … すぐ帰らんと行けんばい。今日は、お疲れ様でした。また、次んバイトん日に。」己の方を見つめる彼の表情もあまり視界に入ってこなくて己の脳内を洗脳したのは己が失恋したって言うことだけ。彼の優しさに少し何処か乾いた笑みを見せ視線を少し逸らして大きくお辞儀をすれば背後を振り向く事なく家路へと小走りで向かい___彼女、居たんだ。あんな綺麗で真っ直ぐで素敵な彼女さんの前で私なんかがチョコを渡せる訳が無い。ぽつぽつ、と弱い雨が降るように地面に己の涙が流れていき )
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