four 2016-08-03 15:20:21 |
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その境界が現れたのは、もう百年も昔の話だという。空に引かれた一本の線は、雨が降るとぱっくりと口を開く。そこから現れるのは、黒い影のような化け物たちだ。線は世界中に広がっているが、化け物はどこに何体現れるのか分からない。だから人間は、雨が降るたびに祈るような気持ちで空を見上げるのだ。どうかここに現れませんように、と。
おかしな話ではあるが、その化け物を倒すことができるのは、同じく黒い影の姿を持つ化け物だけだった。二種の違いは、言語を話すことができるかどうかということだ。人を襲う化け物は、「うう」だとか「ああ」だとか、いわゆる喃語のような言葉しか話すことができない。それに対して、人を助ける化け物は、日本語に始まり英語、フランス語、ドイツ語など、すべての言語を用いることができる。あるいは、使っている言語は特有のもので、テレパシーのように自動で翻訳されていると考える者も居た。
二つを区別するために、人を襲う化け物はシャドウ、それを倒す物はストレンジャーと呼ばれるようになった。前者がそれを形容する呼び名を付けられたのに対して、後者が異邦の者と言われるのは少しおかしな話であったが、敢えて異なる言葉を付けることで敬意を表したつもりなのだろう。
現れたシャドウはストレンジャーに倒されるとして、それでは、ストレンジャーはどこへ行くのか。一度現れた黒い影は、倒さない限りその場に留まりつづける。そのせいで、最初に現れたシャドウは、ストレンジャーが境目から落とされるまで、ずいぶんと多くの人間を食べたという。
ほとんどのストレンジャーは、影としての研究材料になるため、各地にある研究所に住処を作られている。残りのストレンジャーは建物などの影に紛れて、シャドウが現れる時をじっと待っている。ごく一部、人と共に生活するストレンジャーも存在しているというが、現在その報告がされることはない。というのも、五十年前に大規模な実験が行われ、シャドウ・ストレンジャー問わず多くの影がその生を研究者たちに奪われたことに起因していると言われている。
さて、とある国のとある森の奥に、一体のストレンジャーが住んでいた。名前は___。本来、ストレンジャーに個別の呼称が付けられることはない。では、彼に名前を付けたのは誰なのか。それは、彼と共に暮らす盲目の少女だった。
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少女の幼い頃~成人するまでのんびりじっくりしたいけど、そんなお相手様いるはずもなく。
少女は盲目、もしくは、成長してから錬金術師や魔女になるっていうのでも面白そうだなぁ。
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