匿名 2016-07-26 11:48:37 |
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そう、か。…ありがとう。
( ゆらりとこちらに伸びてきたその白い手を、どこか他人事のように目で追っていた。するとなんでもないように髪をすり抜けていったそのぬくさに小さく肩を揺らし、ちらりと彼の瞳へ視線をやるも交わる事は無く。ペンを抜き取られたことに気付いたのは数秒後で、ワンテンポ遅れてはしまったがどこか照れを滲ませた声色でお礼を述べ。ペンをゆらゆらと重力に従って指の隙間で揺らすその仕草は、彼が何を真似ているのか推し量るのに十分で、ふっと小さく頬が緩んだ。 )
俺達は来月に何を控えているんだっけ…。夏休みになってもまだ生きていたら、まぁ、検討しようかな。
( 見舞い。病を患う人間に会いに行くという意味では、その言葉以外にふさわしい何かは思いつかなかった。それでも、会ったことのない父息子間の対面の場を見舞いと言ってしまうのは何だかしっくりこないのだ。少しの気恥ずかしさがあったかもしれないが、こちらを見据える彼の視線から逃げるように宙を仰いでは問いかけられた言葉をかみ砕く無言の時間ができてしまい。ややあってから落ち着いた口調で上記を述べると、彼が持っていたボールペンを今度はこちらがするりと抜き返し、思う様に進まなかったレターセットを丁寧にかき集め。あまり音を立てない様後ろ手で椅子を引いて立ち上がると、「今日は邪魔をして悪かった。そろそろ閉館だよ」と告げ勉強道具の片づけを促して。 )
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