都々 2016-06-18 21:21:15 |
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( 固く平らな地を蹴り、軽い体を空へ預ける。舞い上がる細かな砂と星の欠片。ふわりと浮き上がる感覚に身を任せると、まるで自分も無数に散らばる宇宙ごみの一つになったかのような感覚に陥る。いや、宇宙に捨てられたものという括りで考えるのならば強ち間違っていないのかもしれない。腰のベルトにぶら下げた試験管型の容器の一つを一撫でし、中で輝くピーコックブルーの光を揺らす。光の数は二つ。この広大な黒い海を行く宛もなく彷徨う日々はまだ終わりそうにない。これを全て集めきるまでは、帰る場所も迎えてくれる者も存在しないのだから。__ああ、いけない。思考まで宇宙の何処かへ遣ってしまっていた。ふと我に返ればすぐ側まで小さな岩が迫っている。くるりと身体を反転させ、岩に手をついた反動で方向転換して星の隙間を抜けた。遠くの方で落ちていく星が見える。尾を引くそれを地に縛られた者たちは“流れ星”と呼ぶらしい。星が流れ終わるまでに願いを告げることができればその願いは叶うのだとか。ならば「 もう一度 」その言葉が続く前に流れる星と己との間の空間に亀裂が走り、裂け目から巨大な物体が現れた。群青の体から小さな黄金の光を溢れさせるそれは静かに宇宙を泳ぎ始める。「 宇宙鯨だ 」珍しいこともあるものだ、こんな寂れた宇宙の片隅に鯨が現れるとは。どうやら己の行き先と鯨が向かう場所の方向は同じらしい。足を上下に動かして近くへ寄れば光の欠片が己の手に、頬に触れた。優しい光だ。「 分かれ道まで、一緒に行っても良いかい? 」返事こそなかったものの、前方に浮かんでいた岩の塊を胸鰭で除けてくれたところを見るに肯定されたと受け取って良いのだろう。ふと先程見ていた方向に視線を遣ったが、そこには既に星の流れた跡すらもなくただ黒とも青とも取れる暗闇が広がっていた。やはり願いを叶える為には己の力で進むしかないらしい。温かな光を隣に感じながら、沢山の星とごみと願いとを抱える広い広い宇宙の水を掻いた。 )
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