かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(選ばれた紳士が社交の一環として嗜む為のウィスキーではない、ただ少しでも早く夢の世界に落ち行く為の薬代わりに神経の高ぶりを解し気持ち穏やかにさせる為のウィスキーを眠れない明け方まで適量とは言い難い瓶の空を枕元に乱雑に置き、安っぽさが伝わる薄い布団に体を包ませて浅い眠りの世界に落ちて行き。それも数刻の内、カーテンが開かれる音とそれに伴い部屋の中に差す眩しい程の太陽光にすっかり染みついている眉間の皺がより一層深い物に変わり、現と夢を意識が覚束ない道すがらシーツを剥がれ元気な朝の挨拶によりハッキリとその意識を現実に寄せて怪訝さを残す表情で唖然と目を開き。寝る前の深酒が未だ少し残っている事を薄ら霞がかる意識と上手く働かない思考回路で察しつつこの家に馴染みが生まれ始める彼のその姿に嬉しさと疑問を同量抱き「――坊ちゃんが来るにゃぁ未だ早い時間だな」二日酔いの頭痛の入り混じる頭病みを抑え込むように長い前髪を下ろす意味合いを込めガリガリと頭部を掻き毟り、久しく堪能する事の無かった朝方の澄み渡る酸素を心臓の調子を整えるか如くゆぅくりと時間を掛けた深呼吸を数回繰り返した後に漸く横たわっていたその体を起こして正面切るように彼を瞳に映して「――…今日は随分と粧し込んだ井手立ちだな」手を伸ばせば以前とは違い増えている装飾品のそれを手に取り脱がせ、指の腹でボーラーハット特有のフェルト素材をなぞり「忘れ物ならそこの棚の中に、」横になっていた事で少し気怠い体を伸ばすと首を左右にコキコキと軽い骨の音を鳴らし、顎を使い預かり物の鞄が入るショーケースを示して。普段なら起きている事の少ないこの時間、太陽と略同刻だろう今を彼と共に過ごしていると言うのは形容しがたい不思議な感覚で有り、ああも毎日後悔と共に会いたいと思い巡らせて繰り返される鬱に苛まれていたと言うになんと簡単な事だろうか、今彼を目の前にして浮かぶのは彼が又足を運んでくれた事実を喜ぶ感情と部屋の中に籠っていては気付かない柑橘を甘く煮詰めたような濃厚な金木犀の香り。鼻から息を吸い込めば秋の香りを肺に保存しゆぅくり吐き出し「秋を香代わりなんてやる事が違うな」クと喉を掠り鳴らす笑い声をくぐもる様に喉奥で上げて、普段の清潔感のあるシャボンの香りとも又違うそれを揶揄するようにからかい含めて言葉を付け加え猫背では有るが立ち上がれば背丈の有る体を立ち上がらせて先ほど相手から脱がせた帽子を再びトンと形の良い頭に被せてそこで相手が普段と違い大きな鞄を並べている事に気が付いて片目を細めると「旅行なら素敵な土産でも頼もうか」その大きさから学校関連の物か将又女性関連だろうかと小さな推測を行いながらその大きな鞄に視線を向けつつ捻くれた言葉を一つ向けて)
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