かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(珍しい出会いのきっかけとなった幽霊屋敷の一件から、時は直ぐに流れてあっという間に数週間が経ち。今日の空もあの日の様にさっぱりとした乾いた青色で一面を覆っていて辛うじて漂う雲もその存在を掻き消される程気持ちの良い。海外から仕入れたばかりのパリッとしたスーツを身に纏い、片手にはにはキャラメル色の革を張った手箱、今でいうアタッシュケースを持ち出会いの場所へと向かい。今は休日の昼下がり、街は普段に増して人口が溢れており洋と和が入り混じれ正にハイカラ。子供のはしゃぎ声や何処かの婦人等の笑い声、騒がしく時には多くの車が去った後に残る排気ガスで視界が曇ってしまい時代の進展と景気の活気を鮮明に感じられて良いと思う反面道路整備の行き届かない現状で信号の無い道路を渡るには一苦労。自動車ばかり活気付いてどうするんだと声に出したいのを堪え人々の視線をぐぐり抜けながら漸く何本もの蔦が絡み付き茂みに囲まれてしまった屋敷へと辿り着き。相手は自分の存在を覚えているだろうか、数日なら記憶に残るかもしれないものを既に何週間も経ってしまった。忘れているのも無理は無い、けれど少しだけでも記憶の断面に残っている事を期待して「常に鍵が開いている」と教わった屋敷のドアノブを捻ると不用心にも確かに鍵が掛けられていない事を把握し、ほっと胸を撫で下ろして。「相変わらず生活感の感じられない内装だ。しっかりと生きていてくれればいいけれど。」屋敷内は昼時でも陽を通す窓の設置が乏しい故に薄暗く感じられて、前回と同様異世界に迷い込んだような気持ちで書斎へと足を踏み入れ「……おや。寝ていらっしゃる。起こしてしまうのはあまりに可哀想ですかね」音も無く扉を開けたのは正解で静寂な室内からは小さな寝息が聞こえ、僅かな緊張をほぐし。扉の傍へと手箱をそっと置くと、うつ伏せで寝てしまっていると思われる相手の顔を上から覗き込み)
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