かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(追わせるには十分な時間を与えた筈、後は時の流れに任し自身は帰宅するのみで人々の注目を集めないようにうる覚えな人通りの少ない帰り途を辿り。幾ら空が変わらず見る景色であっても、眩い星々を眩ませてしまう都会の街の灯りは見慣れぬ街並みを艶やかに映し出している様。疾走する産業の発展に期待を抱くのと半面、父の関連する内訌が近付いて来ているようにも感じられ一括りで良しとは云えない時代に黙す事しか出来ない歯痒さにただ苦笑が洩れるのみ。いずれは背負うべき立場と責任に何故だか息苦しく、気が付けば今日会ったばかりの幽霊屋敷の住民の姿を思い出し。それは帰宅しても尚思い起こされる記憶となり、結局使用人に咎められる羽目になってしまっても、相手は置き土産を己を抱き締めた腕で大事そうに握り締めてやって来るのではないかと込み上がる期待が後を尽きず。己を目の前にしてもお堅い頭を下げず白々しい畏まり方もしない男、浮世離れした愉快な人に出会ってしまった、甘い現実逃避だと理解していながら不意に見上げた廊下からの窓の外。門の前で立ち往生する人影に気付くなり、身を翻し呼び止める使用人の言葉も耳に入れずに真っ直ぐ裏庭へと向かい。「夢前さん!」子供の背丈程度に造られた隠し扉から身を屈めて脱出し、顔面蒼白した相手の元へ駆け寄りながら拙絡みついた表札から見つけた単語を口にし。少し乱れた前髪をそのままに相手の手首を掴むなり先程出て来た隠し扉の中へ相手を押し込み。裏庭へと到着すると今度は人目に付かない草叢の背後側へ誘導させ「こんなに早く来て下さるとは思いませんでした。後、こんなにも不用心な方だとも。」海外のセキュリティシステムを導入させている造りで既に相手の存在は屋敷の中の一部では門の前に何者かが行ったり来たりしている事を知られており警戒体制に入る直前で。そんな言葉を発する表情には小さな笑みが浮かべられておりくつくつと声を押し殺しながら笑い声を零し)
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