かっぱ 2015-10-08 14:54:24 |
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(静かすぎる部屋の中では進んでは戻るペンの音だけが鳴いていて、今一シックリと嵌る文章が浮かんで来なければ今し方書いたばかりの文章に二重線を引きその存在を消して。長い髪を掻き毟る様にどこか苦り切った表情を浮かべつつガシガシと頭に触れて、この一節に嵌る言葉は何だ。と眉間の皺を深める他無く。不意に響いたのは人の気配で有り、この場所に来るのは自分の作品を口煩く待ち望む担当の彼しかいないと断定している為一度ちっぽけな木造りの年代を感じる机の上に置いてあるカレンダーに目を向けて"次は三日後と云っていた。なんとも適当な事だろうか"と筆が進んでいないせいも有りその仕事の適当加減にやるせなく嘆き染みた感情を落として小さく吐息を漏らし。もう幾度と無く此処に着たはずなのに今日の彼は何かが可笑しい。慣れた道のりの割に何とも煩く耳に付く音を立てながら近づいてくるではないか、それはまるで今自分がどこの場所に存在しておりますと主張するようでその音が神経質な自分には居心地の悪さを与えてしまい胸を掻き毟るような苛立ちと筆が乗らない事に対する不安感に変な汗が背中を伝う嫌な感触を覚えて。カタカタと震えを帯びた気味の悪い程に細い指先で机の引き出し、二段目を開くと其処に入る錠剤が入った小瓶を取り出して。蓋を開けばザザァと大きな手の平に適当な数を落としてそれをそのまま放り込むように口に入れる。机の上に置いてある生ぬるい水で流し込めばその行為だけで激しくなり始めた動機は納まるようで軽く両目の瞼を落とし数秒を置いて。いよいよ彼の存在が書斎の傍までやってくれば瞼を開き億劫そうな動きで体を椅子から上げてズル、ズル、と足を引き摺る風に怠さを前面に出した動きで扉へと近づいて。その扉が開くその動作とほぼ同時に自らもその扉が開くのを手助けする様子でトンと押し「ドンから、とんガラ煩ぇなぁ?。人ン家に上がる時は静かに――は?」最初は伏し目がちに視線を落としつつ嫌味の一つ二つ送ってやろうと息巻いて先の物音を非難する言葉を頭の中で作り上げ、落としていた視線をゆぅくりソロソロと上に持ち上げて行けばそこにいたその姿に呆気にとられ、言葉は止まり。呼吸だって忘れる様な唐突の出来事に瞬きすらも忘れ静かでヒンヤリとした冷たさを孕む瞳に相手の姿を唯々映して。それも何秒の間だったろうか、目の前の相手の肌は陶器のように滑らかであり埋め込まれる眼球は硝子玉を埋め込んだように透き通り、それでいて奥が見えない程吸い込まれそうになる。ツンとした鼻は確りと鼻筋が通りなんとも男前でビロードのような艶のある服を羽織るその姿はこの場所と似て似つかないと言う事だけが明確で。もっと言葉を詰めるならば、自分とは違い過ぎ溢れんばかりの気品が漂うその姿に時間が止まり周りが無色透明となり、そうして恋をしたのだろうと思う。今まで見た事が無い程に綺麗なその姿は夢幻の中でしかイメイジが出来ない妖精や魔物の類に近いと考える頭をハっと現実に引き戻せば先程温い水を飲んだにも拘らず口内が張り付くようにパサパサとしており「――…聞いたことが無いのかぁ?興味本位で此処に来たら変人に頭から食われちまうって」猫背のまま腕を緩く組み真っ直ぐに向けていた瞳をハラリと逸らしながら相手が此処に来た理由を模索しつつ言い捨てて)
(/とても素敵な文章に魅了されて気付けばとても長くなってしまいましたorzがっつりカットして大丈夫ですので返しやすいようにお返事を頂ければ嬉しいです!)
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