SS小説(著者別2本立て)

SS小説(著者別2本立て)

YUKI  2015-09-20 23:21:52 
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※ここはSS小説の部屋です。
※荒し・なりすまし・マナー違反はお止めください
※ご意見・ご感想は2本とも読み終わった後にお載せください
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では、一本目は僭越ながらYUKIが書かせていただきます

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  • No.23 by アマツ  2015-10-04 19:40:56 

「ま、とにかく今はその«式紙»を使って、いろいろ見たりしてね。«式紙»は設定されてる合言葉を言うだけで起動するから。」
「わっかた。」
こうして私は、魔の道に進んでみることにした。

◇ ◇ ◇

船は無事に港へと着いた。
皆、纏めた荷物を持って港に足を踏み入れる中、私だけは“足をつく”ことはなかった。
「ん…?うわっ!ユイナさんが浮いてる!?」
「ふっふっふっ!見よ!これがアリア特製、ゼロ・グラビティなのです!もともと重い荷物とか運ぶのに使ってたんだけど、人体にも使えるんだよね。」
つまり私は今、アリアの作った«式紙»、ゼロ・グラビティとやらの効果で空中に浮いている。『浮遊』の«式紙»だ。
実は、さっきからずっと«式紙»の効果を確認していた。主にこのゼロ・グラビティを。

まぁ、一応は他の«式紙»も調べた。
『発火』や『凍結』、『爆発』といった危険なものもあったし、『変身』、『治癒』、『風起こし』といったものもあって、実に面白い。
まぁ、実際に使ってみたのはこの『浮遊』の«式紙»だけなのだが。
ゼロ・グラビティの名の通り、フワフワした感覚がある。
それでいて、進みたい方向に苦もなく進めるので便利だ。
「へぇ、いいじゃん。アリア、俺にも«式紙»くれよ!」
「ダメです。これは全部ユイナのだから、ゼノにはあげない。あ、『爆発』の«式紙»ならあげるけど。」
「俺に爆発しろと!?」
「いやその発想はおかしいでしょ………そこいらのリア充でも爆発させときなさいよ。」
「お前一体俺を何だと思ってんだよッ!?」
………“こっち”にもリア充なんて言葉あるんだ。
そうこうしていると、船からモルテが降りてきた。
何やらフラフラしていて顔色も悪い。きっと船酔いでもしたのだろう。
「アリア、治癒の«式紙»。」
「え?あ、うん。はい治癒の。」
「ん。」
アリアから素早く«式紙»を受け取り、モルテのところまで移動する。
浮遊していると、積み荷や段差などの障害物が全く気にならないのて本当に便利で楽ちんだ。
「あぅ……うぅぅ……」
「モルテ」
「……なに?……うっ……」
«式紙»を使用する対象を認識する。
あとは、合言葉で起動するだけ。
「『万の薬宝を模倣せよ』」
「……!」
唱えると同時に、«式紙»が青白い光を放つ。
やがて«式紙»は、ピンポン玉くらいの光の球体になって空中に浮いた。
光の球体はそのままモルテの左胸の辺りへと沈んでいく。
私もモルテも、目を丸くしてその光景を眺めていると、やがて完全に光が消えた。
「……気分は?」
「………」
モルテは私の問い掛けに答えず、ぼーっと自分の手を眺めている。
どうかしたの?と問い掛けようとした、その時、モルテが顔を上げた。
「……いい。」
「そう。ならよかっ……」
た、と言おうと思って、声をつまらせる。
モルテが、私の方に身を乗り出して来たのだ。
何事かと目を見張る。出会ってから三日間、こんな反応をされるのは初めてで、少々狼狽えてしまう。
「…………かい」
「?」
頬を少し赤くしながら、何やらモソモソと呟く。
「も、もう一回」
「???」
はっきり聞こえても尚、意図が読めない。
そもそも意図があるのかどうか……

「あー……きっと心地よかったんだろうねー」
後ろでアリアが呟く。
心地よかった、とはどういうことだろうか?
そんな私の疑問を読み取ったように、アリアは説明を始める。
「その治癒の«式紙»も、私のオリジナルなんだよね。で、普通のと違って私のは『魂』にほ影響するから、その不思議な感覚が心地いいんだよ。きっと。」
そうなのか。
それは………別に私がまた«式紙»を使う必要はない。
だから、浮遊してその場を離れる。
「ま、待って……!」
モルテは必死に私を追いかけるが、障害物のせいでうまく追ってこれないらしい。
アリアの隣に着地して、私は彼女の肩に手を置いて言った。
「あとは、よろしく。」
「………え?ちょ」
それだけ言って、別の場を求めて移動しようとした、その時

クイッ___

白衣を引っ張られた。
後ろを見る。
「………」
「………」

案の定、モルテが居た。
何かを期待する目を、私に向けている。
……非常に、面倒だ。

どうしようかと考える。
そして

「はっ!?空飛ぶラティメリア・メナドエンシスっ!?」

虚空を指差し、適当に考えついたことを言う。
ちなみに、ラティメリア(略)とは、簡単に言えばシーラカンスだ。多分。
モルテが何事かと余所見をした隙に、浮遊して逃げる。
モルテは、しまったという顔をして、肩を落とした。
「んなにッ!?ラティメリアッ!?マジか一体どごふぉッ!!」

…………白衣を着た男が約一人、海に落ちたが多分気のせいだろう。

少し先にジラードを発見し、そっちに向かって移動する。
後ろをチラリと見てみると、肩を落としたモルテを、アリアが必死に慰めているようだった。
「………期待されるのは、好きじゃないから」

ポツリとそんなことを呟いて、私は再び前へ向き直った。

◇ ◇ ◇

「ですから、あなた方のお荷物は全て運び出しましたし、ましてやそのようなものを盗むなどと……」
「しかし、現に今朝はあったものが無いのです。リストにもチェックされていない。」
「で、ですか……」

ジラードの方へ近付くと、何やら中年の男と話をしている。
内容を察するに、何かが紛失したのだろう。
「こっちも面倒そう。」
別のところに行こう。

そうしてその場を後にする。
後ろから「何で話し掛けてくれないのー……」と絶望混じりの空耳が聞こえたが気にしないでおこう。
他に何か面白そうなものはないだろうか。

◇ ◇ ◇

ラティメリア…………
どこにもいない。
はっ!?『空飛ぶ』だから海の中を探しても意味ないんじゃ………そもそも海には落ちただけだし。

けれど、今更気付いてももう遅い。

「ぶくぶくぶく………」


僕、カナヅチなんだよなぁ……

◇ ◇ ◇

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