▲▽ 2015-07-15 01:48:59 |
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:旦那様
__俺が水に潜ンのは、誰の為でも無く己の為だけだがねェ。
( 「魚」との呼称の響きを愉しんでいたものの彼が漏らした苦言を耳にしては多少興が冷めたかの様に目を伏せ。漏らされた其の苦言は店の切り盛りをしている者の口から出るには妥当な内容である。店主が店を守ろうとする最もな原因は金銭、そして其の次に位置するのは従業員の存在なのだと分かってはいるつもりだ。がやはり自分は己の為だけに存在していたい質なのだ。自分でも我が儘だと苦笑が漏れてしまう程であったが。『否ァ、其れは困るな。旦那様に迄捨てられちゃア、俺は見事に行く宛が無くなっちまう』幼い子供がそうするかの様に片眉を上げながら一言。其れすらも冗談に聴こえてしまうが自分にとっては飽くまで真面目である。相手が砂浜を歩く足音は何故か己の其れとは全く違う様に聞こえてくる。本当に何故なのかは分からないが意識しているつもりは無くても知らず知らずの内に彼に自分を任せても良いとどこかで思ったのだろうか。『__旦那様に飼われるンだったら、其れも悪くないさァ。あんたならきっと、俺を照らしてくれるだろうから』述べられた言葉に多少考え込む様な表情を見せた後に前記。飼われるという言葉に対して彼は何れ程の重みを感じているのか考えとれる可能性は皆無だが己の思う事をそっくり其のまま伝えてはみて。 )
:時雨
__ケセ、
( 小さな彼の口から否定と此方の名前が出たのを確認しては何を思ったのか少し俯き一度だけ小さく笑って。其れから顔を上げて彼の瞳を厳密に云えば彼の瞳の中に写る己を見詰めながら言う、『……決して疎むな、絶対に妬むな。此れァ、何より御前自身が選んだ道なのだから』と。述べた其の内容は無意識の内に何処か自分に照らし合わせているように聞こえたが元より後悔する気は皆無なのでにこりと笑うが目の下で淀む隈と其の笑みはまるで不釣り合いなのであろう。彼の手を引きゆっくりと砂浜を歩けば軈て近付いてくる海辺。もう彼の了解は取らずに少しずつ少しずつ足元を水に浸して行きそろそろ彼の足も濡れた頃だろうかと振り向いてはやはりそうであったらしく些か愉しそうに笑い。『__タノシイ事を知る準備が出来たンなら目を瞑んな。其れが合図さァ』軈てお互いに下腹まで浸かる程度の深さまで移動完了しては最後の仕上げでもする様に何処か慎重な声音で囁いては少々首を傾げて彼の反応を待って。 )
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