ノアール狐 2015-07-12 02:11:13 |
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【2】「そろそろ使うっすよ!」
朝。
自分が最も嫌う時間。
眠気と気怠さを同時に受けるも、このまま寝ることはできない。
……いや、そうさせてくれない。
ササー、とカーテンが開かれ、朝の眩しい日光が容赦なく照り付ける。
「おーい、ゆかりん。朝ぁー、朝だよぅ?」
「むぐ……うぐぐぐ……」
ゆかりんこと、凉村 癒歌(すずむら ゆか)だよー。今まで19年間生きてきたけど彼氏が一度も出来てないよー……
……朝から一体何考えているんだろ…
「ゆかりん、早く起きてよぅ…」
自分に変な思考をさせた原因、秋山 霊花(あきやま れいか)は、長い前髪をヘアピンで止め、パジャマのまま美少女と言っても差し支えないほど綺麗な顔立ちをし、目を少しだけ潤ませていた。
「…何すかぁ…霊花ぁ……まだ7時じゃないっすかぁ……」
「だ、たってぇ……」
霊花は、恥ずかしそうにモジモジし、長い黒髪をいじりながら視線を反らす。
妙なところで天然美少女っすなぁ……
「言いたいことは素直に言ってくれっすよ。自分らは家族みたいなものっすよ」
「ゆ、癒歌ちゃぁん……」
まるで感極まった人の手本みたいな感じで抱きついてくる。
完璧に泣いてるな、こりゃ。
「んで?何があったんすか?」
「そ、そそそれがぁ……」
*
*
*
玄関の前では、男が数人、声を荒げている。
曰く、
「さっさと出て来やがれ!!」
「ここにいるのはわかってんだよ!!」
「そろそろ我慢の限界だぜコノヤロォ!!」
だ、そうだ。
霊花は完全に畏縮してしまったようで、自分の後ろで小動物が如くふるふると震えている。
自然と護りたくなってしまう。そういう体質なのだろうか?何かのオーラパワー?
……それにしても、こんなことがありながらよくいつもみたいにカーテン開けて「おーい、ゆかりん。朝ぁ、朝だよぅ」とかやってられたっすなぁ…
と、妙な感心をしていると、突然ドアが思いっきり蹴り飛ばされた。後ろで霊花がさらに怯え、短く悲鳴を漏らした。
「こんのやろォ……いい加減にしろってんだァ!!!………アァ?」
「………」
よもや、我慢する必要なんてないっすな。
「んだテメェ?誰だァ…?」
「お宅さんこそ誰っすかぁ?勝手に人ん家の前でかギャーギャー、ギャーギャーと…近所迷惑っすよ」
「おい、女。テメェ、一体誰だ?」
…駄目だコイツら低脳っすな。
「おい、聞いてん……」
「ちっと、黙るっすよ。」
「な……がッ……ガハッ……」
ほい。
撃破。
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