ノアール狐 2015-07-12 02:11:13 |
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<第1刻 壊幕>
「おい!!聞いているのかッ!!キミッ…!!!」
「…………」
中年オヤジの代表みたいな面をした男が、こっちを指差して怒鳴っている…
そんなに怒鳴らなくても聞こえてる。
周りを確認すると、交差点を行き交う大勢の人々が歩みを止めて、少年と中年男に注目している。
少年の名前は夜泉次 浅夏(よみじ あさか)。年齢、16歳の一応高校生。
「……聞こえてます。何か用、ですか?」
「何か用ですかって……キミねぇ…!!急にぶつかって来て、謝りもしないのかッ!!」
これだから最近の若いもんは!!
などと、定番の決まり文句を言う。
…………フツウ、なんだろう。それが、気に入らない…
今すぐにでも、“潰したい”けど、今はそんなことより重要なことがある。
足元を確認する。
そこには、長い棒の先に、文字のような模様が施されている刃が付いた、薙刀のようなモノが落ちていた。
グレイヴ。
僕の所有物。
これを何に使うかなんて、決まってる。
武器は武器らしく戦いに、使う。
「見付けた!!」
後ろの、今出てきた路地裏から、赤いロングコートを着ている髪の長い女の人がこちらへ走ってくる。
その手には、二本のナイフが握られている。
「………早いの…です……」
さらにその後ろから、今度は黒い服を着ていて、髪で顔の半分ほどが隠れている、見るからに根暗そうな女の人が走ってくる。こっちは手に鎖を持っている。
二人は路地裏から表通りの状況を確認し、改めて僕を補足した。
「夜泉次 浅夏!これ以上の抵抗は無駄っすよ!!観念しろっす!!」
「かーんねーんしちゃえー」
赤服の女の人が言い、根暗そうな女の人も続いて言う。
なぜ、観念なんて、しなきゃいけないのだろう?僕は、観念したい気分じゃない。だから、逃げる。
「……嫌です。観念しない。あなたたちが諦めるべきだと、そう思う。」
何がいけなかったのか、そう言った途端、赤服の女の人が一気に距離を詰めて来た。
キィン!と、金属音が響く。当然、通行人達は一目散に逃げる……
…………うるさい。
「そうっすかぁ…でも、そっちが折れるまでこっちも折れることはないっすよぉ!!!!」
「……うざい」
うざい。
だから、弾き飛ばす。
「きゃッ!?!?!?!?」
赤服の女の人は、短い悲鳴をあげて根暗そうな女の人の方に吹き飛ぶ。
正直、呆気ないと思う。
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