主 2015-05-29 19:06:23 |
通報 |
(胸の内を渦巻く怒りにも似た暗い感情に任せて相手へと責めるようににじり寄ったものの、“嫉妬する彼氏のようだ”という言葉にピタリとそれまでの動きが一瞬にして止まり。それと同時にようやく現状を分析する冷静さも取り戻したのか、意識下にはないながらも強く握ったままにしていた相手の腕からゆっくりと手を離し。依頼を受けただけなのだから当然のことではあるものの、演技だと割り切るその発言にそれもそうかと理解する反面、一人激しい虚無感を覚え始めている自分に気が付きながら、「……だろ?俺の名演技にちょっと本気に見えちゃったりした?」なんて悪戯っぽい笑みを浮かべて相手から離れ。しかし嫉妬かどうかは別としても自分の中にあった暗い感情の存在は事実だったわけであり、そのためか此方を見る相手とまともに視線を合わせることができず。すっと視線を落として勢いのまま玄関に転がしていた鞄を肩に背負い直すと、「ま、とりあえず上がってってよ。今日は多分誰も帰ってこないから好きなだけくつろいでいいし」と言葉は普段通りに軽いものの、視線を合わせることに抵抗感を覚えてしまったのか一切としてそちらへと視線を向けず。まだ完全に自分の中にあった暗い感情は消しきれていないのか、相手に背を向けて自宅内へと入って行く表情はどことなく憂いたもの。自分自身でもこの感情が嫉妬によるものなどとあっさり認めることはできないのか、相手に勘付かれないようにとそっと息をもらしながらその可能性を心の内で否定。玄関から真っ直ぐ歩いたところにあるリビングのソファへと鞄を投げ出し。そこで心を入れ替えるように一度伸びをしてから相手の方へと振り返り)
…んで?俺とその子、どっちの唇のが柔らかかった?
トピック検索 |