土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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どんな状況でも彼らはこの世を守りきった。だからこそこの風景を愛おしく思える。この風景を見やることができるのが、奇跡のように感じられる。
「たしかに、そう考えて見ると感慨深いものがあるな……」
「ま、あと一秒でも三途の川から戻るのが遅かったら、そんなことも言ってられなかったんだろうけど?」
「たしかにそうかもね」
千明の言うとおり、丈瑠が三途の川から撤退を決心するのがあと一秒でも遅かったら、彼らはこの世に戻れなかった。それは事実だ。彼らが隙間から飛び出した瞬間、装置は彼らの帰還を待っていたかのように派手な音と共に爆発四散した。まさに間一髪の生還劇だった。
「で、丈ちゃん?なんであそこで戻るって決めたんだ?」
「そのことか……」丈瑠は苦笑いを浮かべる。
「…………」一同は丈瑠に注目する。
丈瑠は一同を見渡し、そしてまた風景に目を戻す。
「……なんとなく、だ」
嘘だった。
丈瑠自身、自分の命を惜しいとはまったく思っていなかった。外道衆の本拠地を叩けるなんてチャンスはそうたびたびはない。だが、結局のところ、仲間の命とチャンスを天秤にかけた途端、丈瑠は仲間の命を取ったのだ。ただそれだけの話だ。
大和屋暁『侍戦隊シンケンジャー 三度目勝機』43 志葉丈瑠 池波流ノ介 白石茉子 谷千明 花織ことは 梅盛源太 より
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