巌雄は、僕の顔を見て言う。 「いいか、医学生、医学とは、屍肉を喰らって生き永らえてきたクソッタレの学問だ。そのことを忘れてはいかん」 巌雄の眼光に射すくめられ、身体をすくませる。僕がずっと思ってきたのと寸分違わない言葉。だが、深さの格が違う。雨上がりの水たまりと、大海原の差異。僕は密かに恥じる。 海堂尊『螺鈿迷宮』ニ十三章 古豪 vs.新鋭 本文 桜宮巌雄 天馬大吉 より