土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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「君って、結構面倒くさいヤツなんだね。黙っていればわからないことなのに。甘ったれなセリフに聞こえるけど、そればかりではなさそうだし……きっとこれまでずっと、一人ぼっちで生きてきたんだね」
白鳥の言葉が、切れ味鋭く僕の過去を断罪した。白鳥は続ける。
「要するに、天馬君には隠されミッションがある。だから客観的な視点で物を見なければならない。同時に桜宮病院とは表沙汰にはできない取引がある。それで単純な社会的正義から、この病院を一方的に弾劾する立場にもない、ということなんだね」
細部は少々不満だが概ねその通りだ。そうした時には四捨五入して、ビンゴ、と呟くことにしている。僕はうなずく。ビンゴ!
「わかりました。それなら今日から天馬君のことをコウモリ君と呼ぶことにしよう。こうして名づけてみると、我ながらとてもしっくりくるな。僕って天才かも。だけどよくわからないのは、天馬君がこの病院にそこまで肩入れする本当の理由だね」
ものすごく不愉快な気持ちにさせられながらも、その言葉には妙な説得力があり、僕は同意せざるを得ない。なかなか鋭いぞ、白鳥。
僕の中で不意に、ある夏の日の光景が甦る。
海堂尊『螺鈿迷宮』十九章 真夏の神話 本文 天馬大吉 白鳥圭輔 より
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