土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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(……)
蓮は仮面の下で悲しげに歪む真司の顔を見たように思った。
(じゃあ、俺は戦いを止めるために戦う)
(馬鹿げたことだ)
(わかってるさ、それぐらい。でも、おれにはそれしかできないんだ)
(城戸、お前には願いはないのか?戦いを止めることなんて言うなよ。お前自身の、お前のためだけの夢だ)
(あるさ)
(聞かせてくれ)
(おれの故郷で、みんなに出会うんだ)
ふと、真司は夜空を見上げた。
(赤く実った林檎の木の下で、お前と、恵里さんと、美穂と、優衣さん、みんなと会うんだ。偶然だって構わない。そこでみんな初めて会って知り合いになる)
(それで?)
(あとは出会ってからのお楽しみさ)
(いい夢だ)
(でもおれのは叶わなくていい。夢でいいんた)
ナイトが変身を解き、それに応えて龍騎も真司の姿に戻っていく。
(戦ってくれ、城戸)
仮面越しでは伝わらないものがある。
ミラーワールドで変身を解くのは死に近づくことを意味していた。
蓮の言葉はそれだけに重い。
(ああ、わかってる)
真司の気持ちは決まっていた。蓮が引き返せないことはわかっている。だったら戦ってやろう。それはただの戦いじゃない。秋山蓮の全存在を受け止めることだ。
蓮は真司が戦いを受けるであろうことは知っていた。どんな気持ちで戦うかを理解していた。だから友人と呼ぶ価値がある。
「変身!」
ふたりは同時に変身した。
相手のいるその場所になにか大切なものがあるように、龍騎はナイトを、ナイトは龍騎を目指して突っ込んでいた。
朝日の射す病室で、恵里はゆっくりと目を覚ました。
井上敏樹『仮面ライダー龍騎』18 本文 仮面ライダー龍騎(城戸真司) 仮面ライダーナイト(秋山蓮) 小川恵里 より
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