すみれは、首を傾げて、続ける。 「ここだけは理解してもらいたいの。患者は病気にかかった人間であって、病人として扱うことではじめて病人になる。ベッドに縛りつければ悪化する。桜宮の終末期患者の平均存命期間は他施設の二倍よ。あたしは患者をこき使い、命を延ばす。これも医療のひとつの形だとあたしは考えてる」 海堂尊『螺鈿迷宮』七章 わがままなバイオレット 本文 桜宮すみれ より