土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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「明朝十時。桜宮病院事務室に集合よ。よろしくね、大吉クン」
葉子が、小学校の頃の呼び名で僕を呼ぶ時は、文句は言わせない、という無言の圧力をかけたい時、絶対に引かないわよ、という葉子の決意を雄弁に語っている。
「やなこった」
捨て台詞を吐いて、僕は時風新報のオフィスを後にした。果たして逃げ切れるのか。自分自身の逃走能力に疑問符をつけながらの遁走(とんそう)だった。
「後悔しても、知らないわよ」
葉子の捨て台詞が、僕の背中をおいかけてきた。
海堂尊『螺鈿迷宮』一章 血塗れヒイラギ 本文 天馬大吉 別宮葉子 より
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