土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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続いてICレコーダーから、高階病院長の告白が流れる。何か言いかけた南雲忠義に、小百合は人差し指を唇に当てて、静かに、と言う。
----せっかくの田口先生の申し出なので、過去に遡ってやり直したいことをふたつ、告白させてもらいます。そのひとつはブラックペアンの因縁なのです。
高階病院長は、前教授の佐伯名誉教授が腹部に留置したペアンを取り出そうとして失敗し、カーボン製のブラックペアンを留置し直した過去を告白し、その患者が亡くなり謝罪の機会が失われてしまったことを悔いていた。カーボン製のブラックペアンは火葬時には燃えてなくなるので、その過失は蘇りませんよ、と田口が慰めている。
「腹黒ダヌキは勘がいいわね。でもさすがに過去の因業が未来の自分の首を絞めることなんて思いもしないみたいね。地獄の業火の中、燃え尽きたブラックペアンが蘇る時、ケルベロスの塔は崩れ落ちるというのに。こういうのを因果応報って言うのよ」
小百合はうっすら笑う。
海堂尊『輝天炎上』21章 陰謀 桜宮小百合 高階権太 田口公平 南雲忠義 より
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