土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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ふと、ためらって声を落とした。
「俺は……真魚に特別な感情を持っているんだ」
突然の告白に翔一と氷川は驚きの色を浮かべた。
「俺は真魚のためなら何でもする。鬼にでもなる。死さえ厭(いと)わない。津上、おまえはどうなんだ?真魚をどう思っている?」
「もちろん好きです」
翔一は即答した。
「葦原さんも、氷川さんも、みんな好きです」
言って翔一はにっこりと笑った。
「そういうことじゃない……」
涼は少し怒ったような口調だった。
そういうことじゃない。
「津上さん……」
氷川はうれしそうに翔一を見つめている。
「葦原さん……」
ふいに翔一が居住まいを正した。
「おれたち、これからどうやって生きていけばいいんでしょう?」
涼は真剣な眼差しで翔一に答えた。
「おまえの気持ちはわかる……俺も普通の人間でいたかった……」
「…………」
翔一がうなずく。
その言葉の重みは翔一と涼にしかわからない。
「だが俺は自分を哀れんだりはしたくない。俺が今の俺である意味を見つけたい。いや、俺が俺である意味を、必ず見つけなければならないんだ……」
自分で自分に言い聞かせてるようだった。
これまでどんな目に遭ってきたか具体的に語ったわけではない。
それでもその言葉だけで翔一と氷川には、普通の人間でなくなったことでつらい目に遭い苦しんできたことが察せられた。
涼の瞳には強い決意が宿っていた。
岡村直宏『仮面ライダーアギト』第四章 本文 津上翔一 氷川誠 葦原涼 より
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