土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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涼を最後に見たのは真魚が翔一をかばった土手だった。
その後翔一への誤解が解けてからアパートを訪ねてみたが、涼はどこかに引っ越していた。
葦原さん、どこ行ったんだろう……?
わたし、嫌われちゃったかな……?
高架下のトンネルを抜けて真魚はとぼとぼ歩いていく。
そのときトンネルの闇の中には真魚の背中を見る殺意を秘めた目が光っていた。
蛇タイプのアンノウン=スネークロードだ。
アンノウンは氷川と別れた真魚のあとをつこて徐々に距離を縮めていた。
だがその歩みを男の声が止めた。
「その女に手を出すな」
呼び止められてスネークロードが振り返る。
トンネルの入り口に外の光を背にして立つ人影が見えた。
スウェットのフードを目深にかぶって顔を隠しているが、その男はまぎれもなく葦原涼だった。
涼には真魚に起きたことがわかっていた。
あかつき村事件の真犯人を知ったこと、翔一への思いに気づいたこと。
以前真魚に触れその記憶を覗き見たとき以来、涼の心はずっと真魚とつながっていた。
たとえ離れていても真魚の気持ちが涼の琴線に伝わってくる。
涼は、真魚が翔一といっしょになって幸せになることを望んだ。
そのために自分がすべきことはひとつしかない。
そう決意して何も告げずに姿を消したのだった。
涼は小指を見つめた。
約束を守れなくてすまない……。
スネークロードに鋭い眼光をむけて涼は駆け出した。
涼は人知れずアンノウンと戦い、真魚を守り続けていた。たび重なる戦いとその体は傷つき、老化し、醜く変わり果てていた。
今、もし、真魚が涼を見てもそろが涼だとはわからないかもしれなかった。
真魚さえ幸せでいてくれたらそれでいい……。
それで俺は生きていける……。
「俺が俺であるのは、真魚を守るためだっ!」
変身した涼の咆哮がトンネル内にこだました。
岡村直宏『仮面ライダーアギト』エピローグ 本文 葦原涼(仮面ライダーギルス) 風谷真魚 より
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