土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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突然、アギトに異変が生じた。
激しく胸を掻きむしり、頭を押さえ、なにかに抵抗するように手足をやみくもに動かした。
拳を叩きつけてアスファルトの道路を割り、ヘッジホッグロードを薙ぎ払い、廃ビルの分厚い壁を蹴って粉々にした。
アギトの中で翔一の意識がアギトの意識を抑えこもうと戦っていた。
『だれの未来も奪わせない』
記憶を失っている間もその思いは意識下で息づいていた。
アンノウンとの戦闘に駆り立てたのもその思いだった。
翔一はわけもわからずにアギトに変身して戦っていたが、心の奥底には人を守るという強い思いが秘められていたのだ。
苦しみもがくアギトの姿を呆然と見つめていた真魚はしかし、偶発的に働いた力によって翔一の意識を感じ取った。
同時に、蘇った翔一の記憶が手で触れたときのように流れこんできた。
真魚は見た。哲也があかつき村で見た光景を。
そして知った。村の人たちを、父を殺した犯人がだれであるかを。
真魚の目には涙が浮かんでいた。
「もぅ……まぎらわしいよ……誤解してたあたしがバカみたいじゃない……箱いっぱい折っちゃったじゃない……五百五十六個体だよ、新記録だよ、指にマメできたよ……翔一君のバカ……アホ……マヌケ……トマトに頭ぶつけて死んじゃえ----」
岡村直宏『仮面ライダーアギト』第四章 本文 津上翔一 風谷真魚 より
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