土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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純は佳代に眠っている遥を手渡すと、一礼して公道へと駆け出した。
「あ……待って!あなたは……あなたは一体……」
純の背後から佳代は声をかけた。
「せめてあなたの……あなたの名前を教えてちょうだい」
「ボクは……ボクの名は……か……」
佳代の問いかけに『門脇純』という言葉が咽喉から出かかった。
「か?」
と佳代は復唱する。
しかし純は自分の名前を飲み込まざるを得なかった。かつての恋人にはそれを告げるには、三〇年という歳月はあまりに長すぎた。
「……か……仮面……仮面ライダー。そう、ボクは仮面ライダー……だ!」
「仮面ライダー!?」
意外な言葉に佳代は目を丸くしている。しかし、その後、佳代は妙に納得したように言葉を続けた。
「……そう……あなたが仮面ライダーだったの……なら、あのバイクをあげなくちゃね。主人の造っていたあのオートバイを……」
「え?それはどうして……?だってあのバイクは形見だから、誰にも渡せないって言っていたのに……」
純はわけがわからなかった。
「……主人は、子供の頃に仮面ライダーに救けられたことがあるんだって……だから、そのお礼にライダーのための新しいオートバイを造るんだって言ってたの。私、本当にそんな“正義の味方”がこの世にいるなんて信じちゃいなかった。全部、主人の冗談だって思っていたの。でも、遥の言ってたヘビの化け物だってホントにいたんだし。今なら……今なら私にも信じることができるわ……」
----純は奇妙な因縁を感じていた。
「主人は本気で、このバイクをライダーのためにと考えていたのかはわからない……。ひょっとしたら、あの人自身が仮面ライダーになりたかっただけなのかもしれないけれど……でも……きっとこのバイク、あなたに乗ってもらった方があの人も喜ぶに違いないわ」
特撮ノベル『仮面ライダーEVE 誕生編』ACT.3 昨日はもう来ない、明日もまた 本文 門脇純 佳代 より
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