土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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翔一は目を落として沈んだ声で答えた。
「おれ、あかつき村事件の犯人なんです」
「あかつき村事件……」
(略)
「……本当のおれは、悪人なのかもしれません……」
「バカな……」
愕然とソファーに座りこむ。
いったん気持ちを落ち着けた氷川は冷静に答えた。
「たとえあなたが言っていることが事実だとしても、証拠がないので逮捕するわけにはいきません。それに、身柄を拘束されたらアンノウンと戦えなくなってしまう……アギトとして戦い続けるほうが有意義だ」
翔一はかぶりを振ると、手錠をかけてほしいと言わんばかりに両手を突き出した。
「津上さん……」
氷川は呆然とその手を見つめた。
だが瞳に力を込めると、右手でがっしりと翔一の手を握りしめて言った。
「この手は人を殺(あや)める手じゃない……人を守る手だ!」
翔一は自分の手に目を向ける。
氷川の言葉を信じたかった。
だが蘇った記憶がそれを許さない。
あかつき村で流れた大量の血が手にべっとりとまとわりついてるように翔一の目には映った。
そんな翔一の状態など構わずアンノウンは活動する。
気配を察知した翔一は反射的に家を飛び出しバイクに飛び乗った。
岡村直宏『仮面ライダーアギト』第四章 本文 津上翔一 氷川誠 より
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