土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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(略)
それにしても『バチスタ』を書いた頃、私の物語は現実を一〜二年先行していると自負していたが、このあたりで現実の速度に創作スピードが追いつかなくなりつつあった。
物語と現実未来が融合してゆく感覚を何度か経験した。これが物語の予見性というものだろう。精微に現実を写し取ったフィクションは、時に未来を創造するものなのだ。なんちて。
帯には「厚生労働省をブッつぶせ」なる過激な惹句が踊ったが、この帯は編集Sさんの専権事項で、私の意思ではない。直後に厚労省元技官の連続殺傷事件が起こり、とばっちりが飛び火するんじゃないかとびくびくした。結局事件は単なる通り魔だったが、そもそも誤報に近い見込み報道が受用されたのは、社会の空気を反映しているからだ。ああいうテロ類似行為の暴力行為は絶対に許されるべきではない。どれほど厚労省が腐敗していたとしても、言論と論理で追いつめればいいだけのことだ。
「厚生労働省をブッつぶせ」は、実力行使ではなく言論と事実呈示で自然に導かれるゴールなのだ。現実のイノセント・ゲリラにとって、テロ類似行為は迷惑千万なのだ。
(略)
◆格言14 義を見てせざるは勇無きけり
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』14『イノセント・ゲリラの祝祭』(宝島社)より
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