土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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上下巻には後日談がある。『バチスタ』が文庫化される際、宝島社は上下巻を提案してきた。さすがに論理的一貫性がないではないか、と編集Sさんに詰め寄ると、Sさんはあっさり答えた。「これは社の専権事項です」
なおも食い下がる私にぼそりと言う。
「文庫本のスタンダードサイズはこの厚さが一番美しいんです」
あう。世の中、私のロジックは通じない。
この物語で、『ハイパーマン・バッカス』なるウルトラマンのパクリ作品を登場させたところ、一部読者からかなり好評だった。当初はウルトラマン・バッカスとして円谷プロで映像化を目指した野心満々の企画だったが、「著作権上、問題なので絶対変えなさない」とI局長に言われ、泣く泣く変えた。私は編集さんのチェックも校正さんの指摘は九割は採用し、一割は我を通す。その一割は曲げたことがないが、唯一の例外がこのウルトラマン問題だ。ああ、円谷プロで見たかった。だが私にも意地がある。いつの日か書き下ろし作品を特撮ドラマにしよう、と一回り大きな野心を抱いて、挫折感に折り合いをつけた。
海堂尊『ジェネラル・ルージュの伝説』自作解説 2『ナイチンゲールの沈黙』(宝島社)本文 より
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