土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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そして来てもらったのが、つげ義春さんです。つげさんは「月刊ガロ」に作品をすでに発表していて、マンガ好きの人たちにカリスマ的な人気をはくしているマンガ家でしたが、つげさんの絵が自分の絵にあうと思った水木は、「月刊ガロ」誌上に「連絡請う」の広告を載せました。そこまでしても、つげさんに頼みたかったのでしょう。
でも、つげさんが突然、なんの前触れもなくあらわれたのには驚きました。着のみ着のままで、何にも持たずに、わが家にふらりとやって来たのです。聞くと、住むところもないというのですから、水木もあわててアパートをさがしたようです。つげさんは飄然(ひょうぜん)としていました。
「お父ちゃん、つげさんって、仙人みたいな人だね」
「うん、霞を食って生きているのかもしれん。実際、ものもそれほど食わないし」
「仕事は熱心なの?」
「熱心とまではいえないな。あの人が座ったところに座ると、オレも仕事をする気がうせてしまうんだ。でも絵はとてつもなくうまい!」
武良布枝『ゲゲゲの女房』五章 水木も家族も人生一変 アシスタントの人たち 本文 水木しげる 武良布枝 より
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