土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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「クッ、熱い……」クリプトが苦悶の声を上げた。
「ヘッ、皆んなにゃあ迷惑かけたけどよ。地球を見ながらクタバるのも良いかもな……」ルーツは強がりを言いながらも脱出方法を検討していた。
ALICE ALICE ALICE ALICE
これであなたたちとも、お別れしなければ……。
ALICE ALICE ALICE ALICE
ALICEはSガンダムの機体に最後の命令を下した。それか降下中のシャトルを狙撃させるというものだった。その後、彼女はSガンダムのパイロットを脱出させる仕事にとりかかった。彼らを脱出させるためにはSガンダムは分離しなければならない。分離すれば、彼女は二つの補助機器っ別れる事になってしまう。その時、彼女は普通の学習型コンピューターに戻ってしまうのだ。
ガクンッ、と突然Sガンダムの機体に衝撃が走った。上半身がシュッと音を立てて外れる。続いてゴワッとバーニアの音。機体の中央のGコア、つまりルーツのコクピットを中心として、AパーツとBパーツのコクピット・ブロックがSガンダムを離れて行く。
「助かるのか!」ウェストの興奮した声が響いた。
「“ガンダム”が助けてくれるらしいぜ。やっぱりコイツは生きてるんだ。俺たちに自分で生きろと言っているんだ」ルーツは確信した。
ALICE ALICE ALICE ALICE
ありがとう。私の記憶……。
ALICE ALICE ALICE ALICE
「それにしても、さっきのMS、嫌に呆気無く落ちたようだな。まさか……」
「よせやい。機械がニュータイプだなんて言い出すなよな」
各々のコクピットにのディスプレイに「降下」とい文字が映った。「有り難ェ、このまま降りられるぜ」
Gコアは大気圏突入の姿勢に入る。ルーツは、クリプトは、ウェストは見た。SガンダムのA、Bパーツが再び人型を成してスマートガンの発射姿勢を取る姿を……。一条の光が朱に染まった宇宙を進んでいくのを……。
さようなら。ALICEのの残留思念がそう言った。彼女が最後に夢を見た。地球から浮かび上がる二つのSの字が見え、それが重なって二重螺旋になった。彼女にはそれが何か分かっていた。ヒトのDNAだ。
永久にヒトの記憶を伝えるもの……。それこそが“S”ガンダムの意味。大気圏突入の高熱で、彼女を構成していた補器の内部に短絡思考が増大した。不規則で非論理的な思考回路。
ALICE ALICE ALICE ALICE
良い夢を……。
ALICE ALICE ALICE ALICE
ALICEは今、人間だった。いや性にも年齢にも、いかなる者にも束縛されない存在。スプリーム。それは超越した存在。彼女は天界に召す女神“ワルキューレ”にはならなかった。そう、菩薩だった。
高橋昌也『ガンダム・センチネル ALICEの懺悔』第十四章 アース・ライト 本文 より
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