土佐人 2015-05-26 05:15:51 |
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「オトナになったのかな、アルは。どこか落ち着きがでてきたように見えないか?」
学校脇に停めた車の中で、アルの父親は、ふと読んでいた新聞から目を上げて、校庭に並んでいる自分の息子の後ろ姿に、言葉を漏らした。
助手席に座った母親が、クスクスと笑う。
「いつもかぶっている帽子をしてないからでしょう」
「そうか、そうだな----」
父親は再び新聞に目を落とした。
「あなたはさっきから、それとにらめっこをして、なにか面白い記事でもありますのかしら?
「いやね。おまえもこのコロニーが、クリスマスにジオンの核ミサイルの目標になっていたのは噂は聞いているだろう。この記者は、それなこのコロニーに駐在してた連邦の新型モビルスーツを、もろとも破壊しようとしたからではないか、というんだ」
「ま、あ、恐ろしい----」
「しかし、面白いのは、この記者が、クリスマスに連邦のモビルスーツと闘った、ジオンのザクについて言及してるくだりさ」彼は新聞を指で弾くと、続けた。「そのパイロットは、自分が連邦の新型を破壊しなければ、このコロニーが味方によって核攻撃されると知って、単身闘いを挑んだというんだ。つまり彼は、このコロニーを救おうとしていた、というんだな。自分が死んだ時に備えて、ことの一部始終を納めたテープも、残してあったらしい。それをこの新聞社は入手したんだそうだ」
「まあ、ほんとなのかしら?」
「さあねえ?ま、詳しいことはそのうちわかるだろう。そのパイロット----」新聞を折りたたみ-校庭のアルに目をやると、もう記事のことなどどうでもいいと言った口調で、彼は付け足した。「奇跡的に助かったらしい。今朝、意識を取り戻したそうだから----」
OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』小説 エピローグ/0080----春 本文 アルの両親 より
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